Saturday, July 14, 2012

シエラレオネ ~愛と欲望の渦に翻弄される大自然~


ガーナに比べてまだ戦後復興したばかりのシエラレオネ、そして有り余るほどの豊かな資源。
ここにいる外国人は、大体がビジネス目的か国際開発関係者等。
それらが行く場所やホテルは大体決まっている。
首都フリータウンのホテルに泊まっているだけでも、いろんな男たちを見る。
その中でも、ビジネス目的だけの人々は雰囲気でわかる。

アメリカ・イギリス・中国・インド、この4国は強力でどこにでもいる。

ホテルなどにはいないが、この地に居住して勢力を奮うのが、またレバノン。
古くからアフリカで商いをするレバノン系をただ責めるわけではないが、彼らのビジネスの質にはいつも考えさせられる。

彼らの経営するスーパーマーケット、カフェ、レストラン、ホテルには相当お世話にならなくてはならないし、感謝はしているけれども、そこで雇われている現地人の話を聞くとあまりの待遇の悪さと顧客への感謝のなさに腹が立つのが毎回なのである。
ここでは、現地人の仕事の数は少なく、どんな悪い待遇でもいいから僅かな給料がほしいのが彼らの本音で、その弱みをついている。

今回の私の事前調査等にはいつも通り、レバノン人経営のIPCトラベルよりレンタカーとドライバーを使用した。

この事前調査等は、国内の山の中であろうが、どんな峡谷であろうが、4WDでしか行けないような奥地まで人々に会いに行くものなので、ドライバーの性格や健康状態・運転技術・車の整備状態が、私の命にまでつながっているのである。

スピードを出して危険を顧みない者や、体力勝負の山奥の未舗装道路で元気がなく運転を誤る者や、車の整備や燃料チェックをしない者、それらは絶対に厳禁!この調査は洒落でもなんでもない、体力がなければ命とりな調査なのである。

遠い地方に泊まる際には、たいして施設は良くないがばか高いホテルに泊まるしかない場合も多く、(もしくはJICAハウスなどにお世話になることも)そうするとドライバーはそんな高い場所には泊まれず、自分で近くに泊まれるような場所を探すしかない。

しかし、いくら現地人とはいえ、そこに住んでいなければ、なかなか妥当な場所をすぐに探すのも容易ではないかもしれない。しかし彼にマネジャーから与えられた宿泊及び食費はたったの50000レオン(1000円程度)だった。
そんなものは食事だけでなくなるような金額である。その為、あるドライバーたちは、車の中で寝たりしているという。
それは顧客にとって困る!なぜなら彼の疲れがとれなければ、翌日の長距離運転は不可能だからである。当然。280キロも、睡眠不足で運転されたら、冷や汗で私は頭痛さえしてくるだろう。そんな状態で私が仕事できるはずもない。
全てに影響してくるのである。

しかし、これはずっと続いており、ドライバーが訴えてもマネジャーは完全無視。辞めたいなら今すぐ辞めろ、代わりはいくらでもいる、と言われたという。
つまり、利用客の安全に対する配慮もないことは明らかだ。
ドライバーには家族もおり、養っていかなくてはならない。今すぐ辞めたところで、彼の行き場はない。仕方なく安い賃金で働き続けている。

海外からの利用客も、他にそれほど質の良い会社もないため、高いレンタカー料金でも、仕方なく使用する。

その間に浮いた利益は経営者のふところに入る。

こうして、レバノン人の経営は、平気な顔をして勢力を奮っているわけである。
同じようなことが、ホテル・レストラン・スーパーマーケット等でもきっと起こっていることだろう。そんな荒い経営の仕方では、日本ではまずやっていけないと思うが、ここでは全く問題ないのである。
弱肉強食の世界。



朝食をとっていると、たくさんのインド系らしきおじさんたち。いかにもビジネスな感じで、きっと現地人の生活なんて、興味もなさそうであった。

数席向こうには、遠くからでも何か臭う太った白人のおっさんがおり、またしてもビジネス度満載で金は有り余るほどありそうな雰囲気。
その隣にはいかにも現地人風の着飾った胸のどでかい女性。決めつけたくはないが、たぶん金で買われているだろうと思われ。
おっさんはビジネス滞在時の快楽がほしいだけで、女性は単に金がほしいだけであれば、需要と供給は完全にマッチしており、他人の入る隙はない。

「ほっといてよ。私たちはこれでHAPPYなの」
と両者とも言うかもしれない。



だけど、何なんだ、これって?
あんた、ほんとにシアワセなの?

私にはみえたよ、
あなたの瞳が乾いていて、からからなのが良くみえる。
あなたの心が寂しくて悲しくてそれを埋めるかのようにそこに行きつくのが見える。
あなた自身も気づいていないかもしれない。
けれど、あなたは全然シアワセそうじゃない。



調査場所に行く途中に、山奥の未舗装道路を通った。
その峡谷・滝・川、深い緑の美しさは絶景で息をのむほどだった。
まるで日本を懐かしく思い出すようなその湿った空気と静かな風景は、本当に素晴らしかった。

しかしそこで猛威を奮うのが、今度は中国。
ダムと道路が主であり、相当大きな規模で工事している。政府と共同で実施しているのかもしれないが、その遠い目的はやはり資源狙いだろう。

工事現場の横で、現地人の女性たちが、一生懸命にひたすら道路用の石を細かく砕いていた。石の山は相当大きく、一体何時間同じ作業を繰り返すのか。砕き続けて、一日いくらもらえるのだろうか。私には知る由もなかった。

シエラレオネの鉱山は今でも多国籍会社に牛耳られている。人々は月100ドル程度で働かされているが、その鉱物が輸出された後にどれほどの価値を持つか、などは知らされない。

さとうきび畑も相変わらずあって、いくつかはエジプトの経営。そこでも現地人は安い労働力を提供するだけである。

もうこの国は、完全に支配されている。
その構図はいつの世も暗闇の中で、暴こうとすれば命さえ危ないのかもしれない。

美しい自然を見れば見るほど、人間の愚かさは際立ち、
またいつものように悲しくなるのだった。


人間っていったい何の為に生まれてきたんだ?

自然がもうすぐすべてを大掃除する日もすぐそこ。
私はそのことを全く責める気はない。
なぜならもうずっと、人間が母の声を無視して母を痛めつけているから。


美しいシエラレオネ。
信じよう。
どんな痛みを与えられても
怒りや恨み、支配は決して何も破壊できない。
愛だけがすべてを変えられる。